INTRODUCTION

人生は二度奇跡が起きる…
90年代末から愛され続けるエンターテインメントロボット、AIBOと、注目の若手、技巧派俳優による競演。どこか懐かしくて新しい物語が誕生。

この映画は、実在のロボット修理人・乗松伸幸さんをモデルに、ロボット修理の天才的な技術を持つ少年が、依頼品のAIBOをめぐり過去と向き合い、新しい絆を育んでいく感動の物語。倫太郎を演じるのは、映画『ロック わんこの島』で名子役ぶりを見せた土師野隆之介。本作では孤独な少年の葛藤を瑞々しい演技で体現し、ブータンのドゥルク国際映画祭でみごと最優秀主演男優賞に輝いた。そしてヒロインすずめには、100人のオーディションから選ばれた新人、緒川佳波。そして熟練俳優、大空眞弓、大村崑、金谷ヒデユキ、亜湖、水沢有美、丸山ひでみら懐かしい演技派が脇を固める。

監督は、記録映画『ムーランルージュの青春』(2011)で話題を集めた田中じゅうこう。『道しるべ』(2015)に続き、娯楽性と独創性にこだわった"夕焼け劇場レーベル"第2弾として製作された本作では、三年の歳月をかけて榛名湖と東京ロケを敢行。無縁社会の到来が叫ばれるいま、ロボットに癒され、再生していく人々の絆のドラマが、雄大な自然の中で紡がれていく。

2021/日本/DCP/ステレオ/16:9/108分

予告編 & 最新情報

リアルタイム

夕焼け劇場とは?

かつてATG映画というものがあった。1960年代後半から90年代の初頭までつづき、1000万円映画と言われた。作家の芸術性を重視して、低予算だがクオリティの高いものをつくっていた。また角川春樹氏が始めた所謂角川映画は、1976年から1992年までの娯楽性とメディアミックスを主としたお金をかけた映画群があった。それからもうひとつ重要な日本映画のシーンがあった。それは、1984年から1997年にかけてつくられた個人で社会性と娯楽性をドッキングさせた伊丹十三映画というものであった。
 そこで夕焼け劇場は、内容は伊丹映画の要素である社会性と娯楽性を加味した、客の呼べる映画館の中でワクワクする胸躍る映画をめざす。ただATGのように1000万円から1億円までの予算規模で低予算で面白い映画をつくる。そのためにもう一つの柱は、シナリオである。まず卓越して独創性のある脚本が最優先にされるべきである。
 そしてこの映画レーベルからは、角川映画や各撮影所がかつて担ってきた自社製のアイドルやスター、また新進の監督や脚本家を排出していくことも大きな命題として考えています。たとえば年二本とか四本という連続した制作体制がそのためには必須であるということを明記しておかなければならない。
 この低予算で娯楽性と独創性とのテーマを共有できれば、どこの会社がつくってもいいし、どの監督がつくってもいい。配給も共鳴してくれる媒体があればその都度選択していっても構わない。最終的このレーベルがひとつの組織として変遷していくこともあれば、伊丹さんのように個人レーベルに終わることになるかもしれない。これは野心でなく単純に「面白い映画をつくり、観せたい」ということが本来の目論見であるから、一本でも面白く記憶に残る映画が生産されることを切に願ってやまないのである。 
(監督:田中じゅうこう)

STORY

天才的な技能を駆使し、古い家電からロボットまで修理を請け負う工房で働く
16歳の倫太郎。孤児として育った彼は、高校を中退しバイトをしながら深夜独学でロボットの勉強をしていた。そんな中、東京でひとり暮らし中の老婦人からAIBOの修正依頼が倫太郎に舞い込む。
亡き息子が遺したと言うAIBOは、音声装置とメモリーが壊れていた。



時を同じくして、倫太郎は発声障害のある14歳の少女すずめと出会う。
すぐに仲良くなったふたりは、依頼品のAIBOと共に20年ぶりに復活した榛名湖のダイダラ祭りへと向かう。湖には「甦りの伝説」があり、願いが叶うと亡くなった人が甦るという。その帰り道、AIBOがとある録画映像を映し出したことで、倫太郎も知らなかった過去が明らかとなっていく―――。

STAFF

監督:田中じゅうこう

1955年生まれ/福岡県出身。新藤兼人に師事。1988年『ばってんモザイク』でATG脚本賞特別奨励賞受賞、その後数々の映画やドラマを演出。2011年記録映画『ムーランルージュの青春』で注目を浴び、2015年には園まり30年ぶりの映画出演となった『道しるべ』を手掛ける。


制作協力:乗松伸幸<㈱ア・ファン代表>

1955年生まれ/愛媛県出身、1977年福岡工業大学卒業後ソニー関連会社入社し、クウェイト、パキスタン、サウジアラビア、インドなど海外駐在し、現地でのサービス網の構築、技術指導。1989年にソニー株式会社へ転籍 海外赴任を経る。1999年より国内勤務、ワールドリペアーセンターにて海外への補修部品の地峡、ソニーCSにて国内修理部門を担当「ソニービンテージ部門設立」。2011年にソニー退社後、ソニー製品のメンテナンスを主業務とする。株式会社ア・ファン設立、AV機器等のメンテナンスとあわせて、旧AIBOの修理や合同葬にも取り組み実施している。

〜著名人からのコメント〜

  • 私たちは、先に逝ってしまった人と、どう向き合ったらいいのだろうか。
    もう一度話しをしたかったという思いは、いつまでも消え去らない。
    『ロボット修理人のAi愛』は、そんな思いに寄り添って慰めを与えてくれる
    作品だ。登場する誰もが優しい。誰もが他人の人生と並走しようとする。
    語られる、母、父、息子、兄、妹、先生、赤ちゃんなど多くの死者達までが優しい。その優しさの象徴として美しい湖が夢のように何度も現れる。
    映画とは美しい湖の別名ではないか。そんな思いも立ち上がってくる。
    そうなのだ。映画もまた、死者を蘇らせてくれる奇跡の装置なのだ。
    監督は、2本の映画へのオマージュを捧げている。
    溝口健二の『山椒大夫』。姉が入水する、張り詰めた美しいシーンである。

    もう一つは、小津安二郎の『秋日和』。別々の暮らしが始まる母と娘の別れのシーンだ。このオマージュによって、失われたものとの会話こそが映画だ、という事が分かるのだ。だから、私は『ロボット修理人のAi愛』を観ながら、ずっと泉下の住人になった友人と会話しているような気がしていたのである。

    萩原朔美(映像作家・多摩美術大学名誉教授)
  • 私の愛する人を、甦らせてくれた「ロボット修理人のAi」 。愛する人と共に過ごした映画の時間。でも、人は誰しも別れがある。美しい湖の映像が映し出された時、私の側でこの作品を一緒に見てる彼を感じ、信じる事ができました。彼に会いたい時、きっと又、この映画を観ることになりそうです!美しい湖の映像に涙しながら……。ありがとうございました。田中じゅうこう監督そしてスタッフの皆さん ありがとう……。

    大林恭子(映画プロデューサー)
  • 限られた世代のみで物語が進行する低予算映画が多いなか「ロボット修理人のAi(愛)」は、幅広い年齢のキャストが、死者とのつながりを切望するからこそ、物語が温かく感じられる。
    釣りをするシーンが何回か出てくるが、水面から浮かんでくるのは、変えようのない過去の想い出か…。

    3年後のラストに訪れる幸せの時間がなんとも微笑ましい。。

    小張アキコ(映画評論家)
  • 榛名湖の静かな時間の流れに浸りながらスクリーンを見つめる。それは、劇場の静かさとリンクする。スクリーンには、様々な物語が交差し、それらの物語は榛名湖の湖面に映る風景のように大小の波紋を描きながら拡がっていく・・・

    今関あきよし(映画監督)
  • この映画は犬のロボットが失いかけた人間関係を修復してくれるという物語の中に、伏線とも言えるいくつもの綾が丁寧に織りなされ、感動の瞬間を紡いでくれる。何より美しい湖の辺りで出会う少年と少女が愛しく、この二人の秘密が解き明かされていく過程に感涙。少年を遠くから見つめるあるお婆さんの眼差しも何か失ってはならないものを思い出させてくれる。その大空眞弓さんは35年ほど前、田中監督が若かりし助監督の頃にお世話になって以来の再会。監督を見守る視線が役そのものと重なったように感じた。その作品で田中さんに導かれて見習い助監督を経験した私は、この映画そのものに人と人が繋がっていくことの豊かさを感じ、涙なしには見れなかった。

    篠原哲雄(映画監督)
  • コロナ禍でそれまでのなにげない日常が失われ、厳しい現実ばかりが際立ってみえる現在、映画に求められるのはハードなドラマ、リアルなドラマではなく、ある種現実から少し浮き上がった「寓話」のような物語ではないのか。――そんなことを感じさせてくれた一作です。

    大嶋 拓(映画監督)